シリーズ【名大新潮流】Vol.4 名古屋大学と岐阜大学は法人統合。経営の効率化と研究・教育分野の強化を目指す。

名古屋大学と岐阜大学は法人統合

経営の効率化と研究・教育分野の強化を目指す。

 

名古屋大学と岐阜大学のアンブレラ(一法人複数大学)構想が注目されている。世界レベルの研究大学を目指す名古屋大学が「指定国立大学」申請に盛り込んだのだ。「東海国立大学機構」(仮称)を設立し、さらに他大学へ参加を呼びかけるという。

2020年度の統合に向け準備が進められている中、名古屋大学の木村彰吾副総長・理事(財務・施設整備担当)に、統合の背景やその狙いについて伺いました。

 

2018年3月「指定国立大学」に指定

 

名古屋大学は、昨年3月に国際競争力強化をめざす国立大学を支援する文科省の「指定国立大学法人」に指定されました。指定申請のなかに大学間の壁を取り払って複数の大学が協力する「マルチキャンパス構想」を盛り込みました。

指定国立大学は、教育研究水準の向上を図り、世界最高水準の教育研究活動ができる国立大学法人が指定される制度で、指定されれば、出資事業の拡大、自己収入の運用範囲の拡大、不動産活用化などの規制緩和などが受けられます。マルチキャンパス構想は、各キャンパスをオンラインでつなぐ双方向授業を実現し、産業界との戦略的な連携を進め、教育・研究力を高めることで、運営費交付金への依存度を下げ、多様な財源を確保して10年後には財政規模を現在の1.4倍とする計画です。政財界から次々に大学改革を求められる今こそ「チャンス」だと考えています。

 

一つの法人が複数の大学を運営する「アンブレラ方式」。

 

「アンブレラ方式」は、一つの国立大学法人が複数の大学を運営する方式で、株式会社では、持ち株会社が複数の事業会社を傘下に運営していますし、UCLAで知られるカリフォルニア大学システムは、バークレー校やサンディエゴ校など10の大学で構成されていますが、それに近いイメージですね。

この法人統合の実現のためには、法律(国立大学法人法)の改正が必要ですが、国による制度的な整備が行われることを前提に統合に向けた準備を進めています。アンブレラ方式による法人統合が実現すれば、全国初のケースになりますね。

統合によって、当面は総務や財務、法務などの管理運営部門を共通化し、合理化で生まれたスタッフや資金を各大学の強みとなる研究支援や競争力を高める分野に重点的に回していこうと思っています。

 

モノづくり産業が集積した

東海地域の産業を牽引する大学をめざす。

 

名古屋大学は、日本のものづくりを支える東海地域において、地域を牽引する世界屈指の研究大学になる責任があると考えています。このためにグローバル競争の中で世界に通用する研究やリーダーとなる人材育成、産学連携の強化、さらには大学の国際化を一層進めていくことが必要です。

トヨタ自動車の豊田章男社長は、自動車業界は「100年に一度の大変革期」を迎えていると、危機感を常々発しておられますが、私も大学のリソースを活用した新しい産業構造への転換や地域社会への貢献が欠かせないと考えています。また、世界的に高等教育へのニーズが高まっていますし、AI活用はじめ社会人に向けたリカレント教育にも力を入れていきます。松尾総長が言うように、この地域を決して鉄鋼や自動車産業が衰退した「ラストベルト」にしてはいけないと思います。そのためにも、大学と大学発ベンチャー、企業、自治体が結びついた産官学の連携強化が欠かせないものと考えています。

 

経済学部や法学部など

人文社会分野の活躍に期待したい。

 

ややもすると、戦略的な産学連携や世界屈指の研究大学というと理工系学部を思いがちですが、大学発のみならずベンチャー企業には経営を担う人材が手薄ですし、総務や財務、企業法務などのマネージメントなど、人文社会系の知見が欠かせません。マーケティングなどの研究成果を社会実装することで社会に還元すれば、産学連携に新たな成果をもたらす大きな可能性を秘めています。こうした視点を含め、地域の産業界のリーダーとして活躍されているキタン会会員の皆様に期待しております。

 

産学連携そして寄付が

研究大学としての飛躍に欠かせない

 

スタンフォード大学は、名古屋大学と教員、学生数はほぼ同レベルですが、 予算は6倍です。授業料が約10倍と高額ですが、研究費を支える主な財源が寄付や産学連携によるものです。

名古屋大学は、1939年に帝国大学になり、2019年に80周年になりますが、単なる祝賀イベントではなく、多くの皆様に寄付を呼び掛ける募金キャンペーンなど研究環境改善など更なる飛躍に向けたものにしたいと考えています。ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

取材を終えて

「東海地区をデトロイトにしない」と、豊田章男社長の「自動車業界は100年に一度の大変革期にある」のメッセージが、名大、岐大の統合を後押ししているように感じた。また、大学ランキングのアジア№1のシンガポール大学が2050年を見据えて、「キャンパスは必要なのか? 大学のコンペティターは出版業? 」という議論には考えさせられた。