名大新潮流Vol.5 接木技術で農業にイノベーションを起こす 名古屋大学発ベンチャー「グランドグリーン」

接木技術で農業にイノベーションを起こす

名古屋大学発ベンチャー「グランドグリーン」

 

農業手法の1つである「接木(つぎき)」の常識を覆した名古屋大学発ベンチャー「グランドグリーン」。接木は、果樹や野菜の栽培で広く用いられている一般的な技術ですが、「接木は同系統の植物同士でないと不可能」という常識を覆したのが、名古屋大学の研究成果から生まれた特許技術「iPAG技術」です。

5年後の上場を目指して研究開発、そして営業に勤しむグランドグリーンの丹羽優喜社長に起業のきっかけなどの話を伺いました。

 

「お天道様の下で働きたい」との思いで農業の道へ

 

私は岐阜市の郊外出身ですが、農業に興味があったのとお天道様の下で働きたいとの思いで農業高校に進学。農家ではないこともあって生産ではなく研究分野で農業に携わりたいと京都大学農学部に進みました。大学に職を得ていましたが、学生時代にラボが同じだった弊社の共同創業者である野田口理孝に、彼が発明した「iPAG技術」を基にした起業プロジェクト立ち上げに声をかけてもらったのがきっかけです。私は事業化に向けた開発担当として名古屋大学に入り、起業をスタートさせました。

 

接木技術のアップデートで、現代社会の抱える農業課題を解消したい

 

弊社は、有史以前から存在する接木という技術を軸に、主に二つの事業展開を進めています。一つは新しい植物の品種を作るための技術開発、二つ目は接木苗の自動作成機の製造販売で、これらの商品化、サービス化に向けて研究を進めています。

タバコ属の植物を媒介にすれば、あらゆる植物を接合できることを発見。この接木技術はアイデア次第で新しい価値を創造します。地球温暖化に伴う気温上昇や乾燥、塩害や病気などに負けない接木苗を通して、食の安全と持続可能な農業に貢献したいと願っています。

現在、接木はほとんど手作業で行われています。1年間の接木苗の需要は国内で約5億本。一人当たり一日の生産は約1000本ですから、まさに労働集約型産業そのものです。深刻な人手不足にあって、接木の機械化は植物の性質上困難でしたが、独自開発の接木補助具を用いることで、バラツキのある苗でも機械で簡単に接木できるようになり、この6月から実装実験を行い、来年には実用化し販売を開始する予定です。

 

接木技術を応用した新たなゲノム編集ツールの開発も

 

遺伝子組み換えは、品種開発に相当な年月と資金力が必要なこともあって大手種苗メジャーしか実用できないというのが現状ですし、日本の農家や消費者はバイオ技術に抵抗感があります。そうした環境から、私たちが進めるゲノム編集送達技術では、作物を遺伝子組み換えするのではなく、ゲノム編集ツール自体をタバコ属に作らせて、接木を介して作物に送り込むことにより、自然に近い状態のまま理想的な植物をつくり出せると、開発を進めています。

 

「接木」+「ゲノム編集」で国際接木苗マーケットを創造

 

世界の種苗市場規模は4.5兆円、うち野菜苗は4,000億円と言われています。グランドグリーンの「接木」&「ゲノム編集」技術により、野菜の生産コストの削減と新しい品種の開発に貢献すると同時に、国際的な接木苗市場の創出も期待されています。

 

プロフィール

丹羽優喜(にわ・まさき)

1985年岐阜県出身。京都大学農学部を卒業。京都大学大学院生命科学研究科を修了。博士(生命科学)。京都大学博士研究員、助教となり、この間、植物発生学の研究に従事する。2016 年に名古屋大学に移り、2017年にグランドグリーン株式会社を共同創業、代表取締役に就任。

 

取材を終えて

京都大学に職を得て、「植物って何だろう」と興味が尽きない研究に勤しむ平穏な日々を覆すベンチャー起業への転身。転職を切り出した時、奥様はお子様も誕生したばかりでショックを隠せない様子だったと、笑顔で語るのも大学4回生からのパートナーとの信頼愛があってのことか。